交通事故における「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態のことを言います。
また、症状固定を決めることができるのは「主治医(医師)」です。加害者側の保険会社が一方的に決める権利はありません。
宮城県警察本部交通部が発表した統計資料によると、令和6年中に宮城県内で発生した交通事故は3,785件、死者数は47人、負傷者数は4,565人(うち重傷者444人、軽傷者4,121人)に上ります。仙台市の当院にも、むちうち(頸椎捻挫)や腰椎捻挫による辛い痛みを抱えた患者様が数多く来院されます。
治療を重ね、お身体を元の健康な状態へと回復させていく過程で、多くの患者様が直面し、不安に押しつぶされそうになるのが、この「症状固定」をめぐるトラブルです。
「もう治療費は払えません」という保険会社からの突然の通告に対し、あなたが法的に、そして肉体的に不利益を被らないために。
接骨院の院長として、数々の現場を乗り越えてきた施術の専門家としての正しい知識と具体的な防衛策をここにお伝えします。
交通事故の「症状固定」とは?
知っておくべき定義と3つの法的意味

症状固定とは「これ以上治療しても改善しない状態」のこと
先ほども解説したように、交通事故における「症状固定」とは、現代における一般的な医学や施術の技術を尽くしても、「これ以上の回復も悪化もしない状態(一進一退の状態)」に達したお身体の節目を指します。
これは、「完全に痛みが消えて完治した」という意味ではありません。残念ながら「これ以上治療を継続しても、劇的な改善は見込めない」と医学的に判断された段階を示しています。
症状固定を境に激変する賠償金(治療費・休業損害・慰謝料)の仕組み
お身体が症状固定を迎えると、それ以降に請求できる損害賠償の項目が変化します。この仕組みを正しく把握していないと、大きな金銭的・肉体的損失を被ることになります。
| 賠償金の分類 | 症状固定「前」まで 発生するもの | 症状固定「後」に 発生するもの (※後遺障害等級認定時のみ) |
|---|---|---|
| 主な項目 | ・治療費、施術費 ・入通院交通費 ・休業損害 ・入通院慰謝料(傷害慰謝料) | ・後遺障害慰謝料 ・後遺障害逸失利益 (将来得られるはずだった利益の損失補償) |
症状固定を迎えた日を境に、加害者側の保険会社から支払われていた「治療費」や「休業損害」は原則として全て打ち切られます。
もし、まだ身体が悲鳴を上げているのにもかかわらず、保険会社の言われるがまま安易に症状固定を受け入れて示談手続きに進んでしまうと、本来受け取るべき入通院慰謝料が大幅に減額されるばかりか、その後のリハビリ費用を全て自己負担せざるを得なくなります。
症状固定は誰が決める?
保険会社ではなく「主治医」である理由

法的・医療的な判断権を持つのは「主治医(医師)」だけ
繰り返しになりますが、症状固定を決定する権限を持つのは、あなたを診察している「主治医(医師)」だけです。
相手方の保険会社は、あくまで損害賠償金を支払う民間企業であり、医療の専門家ではないので判断できません。また、私たち接骨院(整骨院)の柔道整復師も、日々の施術経過から意見を述べることはできますが、法的な症状固定を最終決定する診断権はありません。
必ず医師の診断がすべての法的根拠のベースになります。
なぜ保険会社は「3ヶ月」「6ヶ月」で症状固定(治療打ち切り)を打診してくるのか
むちうち治療を始めて3ヶ月、あるいは6ヶ月が経過した頃になると、保険会社の担当者から「そろそろ症状固定にして、後遺障害の手続きをしませんか?」、あるいは「今月末で治療費の支払いを一括対応終了(打ち切り)とします」といった連絡が入ります。
全く交渉に応じない、一方的な対応をする担当者もいるため、こちらが驚くこともあるほどです。
なぜ彼らがこのタイミングにこだわるのかというと、自社の支出(治療費や休業損害)を最小限に抑えたいという、ビジネス上の予算管理のためです。
彼らは「むちうちは通常3〜6ヶ月で治るもの」という一般的な目安を押し付けてきますが、生身の人間の身体は機械ではありません。回復スピードは一人ひとり全く異なります。
保険会社から「そろそろ症状固定に」と言われた際の4つの防衛ステップ
保険会社からお身体の状態を無視した打診をされた場合は、慌てずに以下のステップで冷静に対処してください。
「体のことは私一人では判断できません。一度、主治医の先生と相談した上でお返事します」と伝え、一旦電話を切ってください。
病院での受診時に、「まだ日常生活のどのような場面で、どれほどの痛みがあるか」を具体的に伝え、治療継続が必要であるというカルテ上の根拠を残してもらいます。
当院のような施術の専門家にも、筋肉の緊張度合いや関節可動域の検査数値などから、施術継続の必要性に関する客観的なデータ(施術報告書など)の作成を相談してください。
医師が「まだ症状固定ではない。治療を続けるべき」と判断した場合は、保険会社に対して「医師の医学的判断と指示により、治療を継続します」とはっきりと伝えてください。
【院長の体験談】
むちうち施術の現場で見る「症状固定」のリアルな判断

むちうちの痛みは外見で見えない。毎日の施術経過が確固たるエビデンス
ここからは、私が仙台の治療現場で毎日患者様のお身体に触れ、共に闘ってきたリアルな臨床の真実をお話しします。
交通事故の怪我で最も多い「むちうち(頸椎捻挫)」は、レントゲンやMRIといった病院の画像診断で「異常なし」とされるケースが極めて多い傷病です。そのため、保険会社から「画像に写っていないのだから、痛むのは気のせいだ」「もう治っているはずだから症状固定にしろ」と理不尽な圧力をかけられやすいのです。
しかし、身体所見は騙せません。画像には写らなくても、患者様の首や肩の筋肉は防御反応でガチガチに硬直しており、関節の動き(可動域)が著しく制限されているという、厳然たる「肉体の真実」が存在します。
当院では、毎日の施術で患者様の「首の可動域が何度改善したか」「どの触診ポイントで強い緊張や圧痛が残っているか」を詳細なカルテとして記録し続けています。
外見では見えない痛みだからこそ、この毎日の細やかな施術経過の積み重ねが、お身体にまだ治療が必要であること、そして万が一後遺症が残った場合にそれを証明するための「確固たる医学的エビデンス」となるのです。
保険会社からの早期打ち切り圧力を、医師・弁護士との連携で乗り越えた事例
以前、当院に通われていた仙台市内在住の40代女性の患者様の事例です。
停車中に激しい追突事故に遭われ、頸椎捻挫(むちうち)と診断されて当院で懸命なリハビリ施術を行っていました。
治療開始から3ヶ月半が経った頃、相手方の保険会社から「これ以上の治療費の支払いは対応できません。今月末で一括対応の終了として一区切りにしてください」と、非常に強い口調で打ち切りを迫られました。
その患者様は「まだ首が痛くて左右を振り向くこともできないのに、なぜ治療をやめなければいけないの……」と、当院の施術ベッドで残念そうにされていました。
私はその悔しさと悲しさを、絶対にそのままにしたくありませんでした。
すぐさま当院での詳細な施術記録と、事故当初から現在にいたるまでの「関節可動域や痛みの推移データ」を書面にまとめ、患者様を通じて病院の主治医の先生にお渡ししました。
同時に、当院が信頼する交通事故専門の弁護士をご紹介し、患者様のご家族が加入していた「弁護士費用特約」を利用して、保険会社との交渉窓口を弁護士に一本化してもらいました。
当院が作成した詳細な施術報告データを見た主治医の先生は、「これだけお身体の制限と痛みが客観的に記録されているなら、まだ症状固定とは到底言えない。治療継続が必要だ」と、診断書に明記してくださいました。
さらに、弁護士が法的な意見書を保険会社に突きつけた結果、最終的にさらに3ヶ月間の治療延長(一括対応による通院)が認められたのです。
最終的に、その患者様は納得がいくまで治療を尽くした上で、主治医と相談して症状固定を迎えました。そして、どうしても残ってしまった首のしびれと痛みに対して、当院の施術記録を添付した「後遺障害診断書」を医師に作成してもらい、適切な「後遺障害等級(14級9号)」の認定を受けることができたのです。
「患者様を絶対に孤立させない。お身体の痛みだけでなく、心に寄り添い、最後まで誠実に向き合うこと」。これが、私たちが掲げる医療従事者としての誇りであり、情熱です。
最新の交通情勢から見る安全への意識と施術の役割
交通事故に遭わないことが一番ですが、万が一事故に直面してしまった時のため、また普段の事故防止のために、最新の交通情勢に目を向けることは非常に重要です。
宮城県内の交通事故統計から学ぶべきこと
宮城県警察が発行する令和7年版の統計資料によると、令和6年中の宮城県内の人身事故件数は3,785件、死者47人、負傷者4,565人(うち重傷444人、軽傷4,121人)となっています。前年に比べ発生件数は248件、負傷者数は367人減少しているものの、依然として毎日多くの方が傷ついているのが現状です。
特に、死者47人のうち「約6割(26人・55.3%)」が65歳以上の高齢者であり、その状態別では歩行中や自転車乗用中が大きな割合を占めています。また、四輪車の死者15人のうち、実に関わらず「4割(6人)」がシートベルトを非着用であったという、極めて痛ましい事実も報告されています。
シートベルトの着用、チャイルドシートの正しい使用、そして歩行者優先の徹底など、一人ひとりのマナーがいかに命を左右するかが、この数字から強く伝わってきます。
【最新改正】令和8年4月導入の「自転車への青切符(交通反則通告制度)」

自転車に関して、非常に大きな法改正が行われました。警察庁交通局の発表に基づき、令和8年(2026年)4月1日から「自転車への交通反則通告制度(いわゆる青切符)」が全国で一斉に導入されています。
これまで自転車の交通違反(信号無視や一時不停止など)は、検挙された場合には即座に「赤切符(刑事手続)」となり、前科がつくリスクや過度な手続き負担がありました。(めったにされていませんでしたが)
現在は、16歳以上の運転者による一定の反則行為(信号無視、一時不停止、携帯電話を使用しながらの運転など)に対して、自動車と同様に青切符が交付され、反則金を納付することで刑事手続を免れる仕組みへと移行しています。
| 主な自転車の反則行為(16歳以上) | 反則金の目安 |
|---|---|
| 携帯電話使用等(保持)(※スマートフォンの注視など) | 12,000円 |
| 信号無視 | 6,000円 |
| 通行区分違反(※逆走・右側通行など) | 6,000円 |
| 指定場所一時不停止等 | 5,000円 |
| 無灯火 | 5,000円 |
自転車は道路交通法上「軽車両(くるま)」の仲間です。
「青切符を切られるからルールを守る」のではなく、あなた自身の命と、周りの歩行者の安全を守るために、自転車安全利用五則(車道原則・左側通行、交差点での信号・一時停止遵守、夜間のライト点灯、飲酒運転の禁止、ヘルメットの着用を徹底してください。
当院では、交通事故に遭われた自転車利用者の方への施術対応や、ヘルメット着用による頭部保護の重要性の啓発(自転車乗用中死者の約5割が頭部負傷のため)にも力を入れています。
症状固定を迎える際の注意点と接骨院(整骨院)の役割

お身体の回復状況を主治医や私たち施術者と見極め、どうしても痛みが残ったまま「症状固定」となった場合、その後の手続きやケアにおいて、整骨院が果たせる役割は非常に大きいです。
「後遺障害診断書」は必ず医師に作成を依頼する
症状固定後も残ってしまった後遺症(しびれ、慢性的な痛み、関節の運動制限など)について「後遺障害等級」を申請する場合、その申請に必要な「後遺障害診断書」を作成できるのは、医師だけです。
整骨院の柔道整復師は作成できませんので、必ず病院の医師へ依頼してください。
接骨院(整骨院)の施術報告書が後遺障害認定を強力にサポートする理由
後遺障害等級の審査は、原則として提出された書面(診断書や画像データなど)のみで行われます。
むちうちなどの神経症状においては、医師の診断書に加え、「接骨院にどれくらいの頻度で通い、どのようなリハビリを受け、客観的にお身体の機能がどう推移したか」が詳細に記された「施術報告書」を添付することが、非常に強力な補強証拠となります。
当院では、患者様が適正な等級認定を受けられるよう、事故直後からのすべての施術記録を整理し、書面作成において全力でサポートいたします。
症状固定後も続く痛みに対する自費施術・健康保険施術への切り替え
症状固定を迎え、自賠責保険や任意保険からの治療費支給がストップしたからといって、あなたの身体の痛みがその日に消えてなくなるわけではありません。
「これ以上、健康保険やリハビリは受けられないのではないか」と不安になる必要はありません。
症状固定後に残ってしまったお身体の辛さに対しては、自費施術(完全実費)や、急性・亜急性の外傷性要因が明確なものに対しては健康保険を適用させながら、当院で引き続きリハビリ施術を継続することが可能です。
私たちは、あなたのお身体が本当に楽になるその日まで、どこまでも伴走いたします。
【Q&A】交通事故の症状固定に関するよくある質問
- Q保険会社から「一括対応を終了(治療費の支払いを停止)する」と言われました。治療は終了ですか?
- A
いいえ、治療をやめる必要はありません。
保険会社がいう「一括対応の終了」とは、あくまで保険会社側の社内都合で「整骨院や病院への治療費の直接支払いを止めます」という手続き上の宣言にすぎません。
まだお身体に強い痛みが残っており、医師が「治療の継続が必要」と判断しているならば、被害者請求の活用や健康保険(第三者行為の届出が必要)を使用して通院を継続することが可能です。
安易に「症状固定」を承諾しないよう、すぐに当院や弁護士にご相談ください。
- Qむちうちの場合、事故からどれくらいの通院期間で症状固定を迎えるのが一般的ですか?
- A
一般的には「6ヶ月」が一つの重要な目安とされています。
これは、交通事故の実務上、むちうちで後遺障害等級(14級9号など)の認定を視野に入れる際、最低でも6ヶ月以上の継続した、かつ一貫性のある通院実績(おおむね週2〜3回以上)が必要とされるケースが多いためです。
ただし、期間ありきでお身体の判断をするべきではありません。お身体の状態が3ヶ月で完全に回復すればその時点で完治(治療終了)ですし、1年以上かかる方もいらっしゃいます。何よりもあなたのお身体の回復度合いを最優先にして判断します。
- Q医師に「もう症状固定にしましょう」と言われましたが、まだ痛くて納得がいきません。
- A
まずは医師に痛みの現状を具体的に伝え、それでも難しい場合はセカンドオピニオンや弁護士に相談してください。
医師に対して「日常生活のどのような動作(例:車のバックをする際に首が回らない、朝起き上がる時に腰に激痛が走るなど)で、どれほどの支障が出ているか」をより具体的に説明してください。
もし医師の意見が変わらない場合、交通事故を多く取り扱う弁護士に介入してもらうことで、他の医療機関へのセカンドオピニオンの受け方や、後遺障害申請手続きを有利に進めるための的確なアドバイスを受けることができます。当院から、交通事故専門の信頼できる弁護士を直接ご紹介することも可能です。
- Q自転車の交通事故で青切符が導入されると聞きましたが、接骨院での自賠責保険の取り扱いは変わりますか?
- A
いいえ、接骨院での自賠責保険や施術の取り扱い自体は一切変わりません。
令和8年4月より自転車への交通反則通告制度(青切符)が導入されていますが、これはあくまで自転車利用者の「交通違反に対する警察の手続き」が変わる制度です。
自転車乗車中に自動車と衝突して怪我をされた場合や、自転車同士の事故によってお身体を痛められた場合、これまでと同様に、加害者側の自賠責保険や任意保険、あるいはご自分の「人身傷害保険」「自転車保険(個人賠償責任保険)」を適用させて、当院で負担金なく施術を受けていただくことが可能です。安心してお身体の治療に専念してください。
まとめ:あなたの身体を守るために、納得のいくまで専門家に相談を
交通事故の「症状固定」は、その後のあなたの示談金(賠償金)の額だけでなく、何よりもこれからの人生におけるお身体の健康に直結する、極めて重要な決断です。
お身体の状態を決定づけるのは、会社の利益を優先する保険会社ではありません。あなたの痛みに最も近くで寄り添っている主治医(医師)、そして何よりも、お身体の声を一番よく聴いているあなた自身です。
痛みを抱えながら、保険会社からの急かすような電話に一人で傷つき、不安な夜を過ごしているなら、どうかその悩みを一人で抱え込まないでください。
当院は、仙台市で交通事故に遭われた患者様の痛みを取り除くための高度なリハビリ技術(柔道整復術・物理療法)をご提供するだけでなく、地域の信頼できる医師や、交通事故専門の弁護士とも、患者様をお守りするための強固な連携・協力体制を整えています。
あなたが心身ともに本当の笑顔と、健やかな日常を取り戻すその日まで、私たちは誠実さと情熱を持って、全力であなたと共に歩みます。
お身体のこと、保険会社との交渉のこと、どんな小さな不安でも構いません。まずは一度、お気軽に当院へご相談ください。
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